5月の連休中に行われた北斗杯は、日中戦、日韓戦共に2ー1で日本が勝利した。
参加選手はアキラ、ヒカル、社と第一回から変らぬ顔ぶれで、事実、彼等はこの世代のトップ棋士だった。
「昔年のライバルの韓国に勝てたのがめっちゃ嬉しいわ」
社は祝勝会で素直に喜びを表している。彼は今年、韓国勢に初めて勝利したのだ。
「オレは秀英に負けたのが悔しい。でもアイツとはこれからも打つんだ。
次に打つ時は負けないぜ」
ヒカルの言葉にアキラのこめかみがピクっと動いた。
「なんてたって、アイツとは院生の頃からのライバルだからな」
「進藤はホントにライバルの多いやっちゃな?」
「社、お前もライバルだからな」
「塔矢ともライバルや言うてたな」
「うん」
「自分、ライバルばっか作っとらんと彼氏作らんかい」
社はアキラの前でタブーな話題を口にしたことに気付いていない。
「塔矢もあんまり進藤を一人占めせんとけや?
こいつに彼氏デキる隙があらへんやん」
「やー、社、まあ、それはいいじゃん。な?」
「社」
アキラの声が低かった。
「進藤を焚き付けないでくれないか。
彼女が僕との対局前に予選落ちなんて結果になったら…」
「えろうすんませんでした、で済ませや、そん時ゃ」
「冗談じゃない、僕が彼女と公式で対局するのがどれだけ振りだと思ってるんだ?」
この時ヒカルはある棋戦の最終予選に駒を進めており、その決勝でアキラと当たることになっていた。
どちらか勝った方がリーグ入りを果たすことになる。
「知らんがな、お前ら家近いンやでしょっちゅう打てばええやん」
「進藤は予選通過に専念するために、僕とは最近打ってないんだ」
(……なんで?打てばええやん)
社は不審げな顏をした。
ヒカルは内心焦っている。
(アキラのアホ
どこの世界にプライベートで打つのが公式対局の邪魔になるライバルがいるんだよ
つーか、お前が検討の後で色々なコトに及ばなきゃ
オレはお前と打ってても予選OKなんだ!)
最近、アキラの口が軽くなったような気がする。
ここにいたらアキラは更に余計なことを口走りそうだと、ヒカルはこの場を離れることにした。
ライバルのアキラと「男女交際」してることを周囲に知られるのが気恥ずかしいのだ。
「オレ秀英たちと喋ってくるからな。
社も人の世話やいてないで彼女作れよー」
(彼女作れ…て俺にだけかい!つーことはコイツら…!?)
ヒカルも大概、口が軽い方だ。
この時も自覚がなかった。
社はこの時、二人の仲を知ったのだが追求はしなかった。
まだ公表する気がないらしいので、ここは知らぬ振りをしてやろうと思う。
(いずれ周囲に知れた日には思いきり突ッ込ませてもらお)
名無しさん として投稿したものを改稿
投稿日:2005/10/07(金) 23:30:37
|